みなさん、こんにちは。株式会社さびらの安里です。今回は、11月19日(日)に開催した、第3回なはーとダイアローグの様子をお届けします!
「那覇市長×東大教授×アーティストの対話
権利としての文化、産業としての文化」
那覇文化芸術劇場なはーとでは、これからの那覇の文化芸術をどう育んでいくのかについて、「なはーとダイアローグ」事業を通じて、市民参加の議論を続けています。
毎年、「なはーとダイアローグ」では、文化芸術をテーマに市長と市民が対話する機会をもうけてきました。今年は、文化政策の専門家と那覇の若手アーティストをまじえて、市民や表現者の「文化の権利」と、持続可能な「文化の産業化」について考えていきました。
【開催概要】
日 時:2023年11月19日(日)14〜16時
登壇者:小林真理(東京大学大学院文化資源学専攻教授)
上原沙也加(写真家)
福地 リコ (映画監督・ライター)
コメント:知念覚(那覇市長)
司 会:安里拓也(株式会社さびら)、石垣綾音(株式会社さびら)、
林立騎(那覇文化芸術劇場なはーと企画制作グループ長)
会 場:那覇文化芸術劇場なはーと 3階 大スタジオ
参加人数:63名
1|知念覚那覇市長によるあいさつ
まずは知念那覇市長からご挨拶をいただきました。「新たな文化芸術を創造するまち那覇」として、創造性や多様性を認めあうことのできる心豊かな生活について、これからも大切にしていきたいとの言葉を頂きました。
那覇市では、「文化芸術を創造し、享受することが人々の生まれながらの権利である」とする「文化的権利」を基本として、未来を担う子どもたちや若者をはじめとする、全ての世代の文化芸術活動が活発に行われるまちを目指しております。
文化芸術の創造性がもたらす、寛容で、互いの多様性を認め合うことのできる心豊かな生活については、私も大切にすべきものであると考えておりますので、この後、皆さまと共に大いに語り合えることを楽しみにしています。
本事業が、本市が掲げる「新たな文化芸術を創造するまち那覇」へ向けて、また一歩近づき、さらなる発展へとつながるものと期待しておりますので、ぜひ活発なご意見を賜りますよう、ゆたさるぐとぅ うにげーさびら。
※知念覚那覇市長によるあいさつ一部抜粋
基調講演①|文化政策とは何か。
イベントは小林真理さんの基調講演から始まりました。
「権利としての文化」、「産業としての文化」をテーマに2017年の文化芸術基本法の改正やコロナ禍における文化・芸術活動の変化などを事例に、日本の文化政策に関する取り組みをご紹介していただきました。
文化を享受する側、文化をつくる側、それぞれの権利が明確に示されたほか、文化を育む環境を整えることが行政としての役割である。なはーとダイアローグ開催の意義とも重なる基調講演となりました。
文化の権利がわかる事例として文化芸術基本法の一部をご紹介します。
文化芸術基本法第2条3項
文化芸術を創造し、享受することが人々の生まれながらの権利であることを鑑み、国民がその年齢、障害の有無、経済的な状況又は居住する地域にかかわらず等しく、文化芸術を鑑賞し、これに参加し、又はこれを想像することができるような環境の整備が測らなければならない。
基調講演② |なはーとカンファレンスの報告
次に上原さん、福地さんより11月初旬に開催されたアートワーカーのよりよい制作環境について話し合うイベント「なはーとカンファレンス」の様子や話し合われた内容などを報告していただきました。
制作現場におけるパワハラや労働環境など文化を育むアーティストを取り巻く環境が共有されたほか、ここからより良い制作の環境整備に向けた施策提案などが共有されました。
特に、アーティストが仕事にて委託契約書を交わすことがない場合が多いというのは驚きでした。
基調講演のコメント | 知念市長
アーティストの様々な支援があると思います。文化に対するインキュベート施設を検討したり、行政として何ができるのか、見極めながら支援していかないといけないと思っています。いずれにしても文化を育む土壌を作っていくことが大事。那覇市全体の風土として文化に対する理解、大切にしていく街にしていく、確固たる表明をしていくことが重要だと考えています。
質疑応答|那覇市の文化を育む環境を考える
先ほどの基調講演に関する質問から始まり、那覇市の文化行政に関する取り組みやアーティストの制作環境に関するなど、会場のみなさんからたくさんの質問をいただきました。
小林さん、知念市長から他の市町村や那覇市の文化政策に関する取り組み事例紹介、アーティストの上原さん、福地さんから文化を創造していく視点を共有してもらいながら、那覇市がこれからより良い文化を育むまちをみんなで考えるきっかけとなったのではないでしょうか。
私が印象に残ったことは、小林先生がおっしゃっていた「伝統文化も、できた当時は現代アートだった」という話です。地域の文化を大事にしていくのと同じように、新しい文化も大切にしていく大切さを実感する一言でした。だからこそ、新しい文化を育む環境を整えていくことや、文化の可能性を排除しないことが大事だと改めて感じました。
会場からの質問
登壇者の皆さんへ、会場から出た質問をいくつか紹介します。
Q1.文化や芸術の成果には時間がかかる。そのためには、政策の専門人材の配置や育成が必要だと思います。知念市長、小林先生の考えをお聞かせください。
知念市長:専門家は必要です。ですから、那覇市が直営しているなはーとには現在、2人配置しております。その方々はなはーとから移動することはありません。
小林さん:指定管理者制度は、最も効果的なものを選ぶ必要がある。文化や芸術は目にみえる成果が出るのに20年はかかる。なので、どうすれば、制度が続き、専門性を維持しながら文化を発展させることができるのかが大事だと思います。
Q2.市民が一人ひとりが表現の場、創造の場をつくる上で大事なことは?
福地さん:東京に比べて沖縄は自分の上映する場所が多くありません。映画館などでは費用が高くなっています。ですので、沖縄で撮った映画を東京で上映するしかない場合が多々あります。気軽に借りれるスペースが増えたら、アーティストは発表する機会を経験する機会、見る側は作品に触れる機会を増やすことにつながると思います。
上原さん:自主作品を発表する上で一番ネックになるのは場所です。文化施設を借りるとなると、すごい費用がかかってしまいます。作品を展示する場所が気軽に借りれることで、文化に触れる機会を増やすことにもなると思います。
Q.3文化や表現を今まで届かなかった人々へ届けてゆくには?
小林さん:文化ホールは集団アートの作品によるものが多くなってしまうため、個人の場合は難しさがあります。気軽に発表できる場所は、確かに地方に行くと本当に少ない。いわゆるアートセンターみたいな場所があってもいいと思います。
知念市長:気軽に発表できる場所として例えば、銀行や病院の窓口といった形で企業に協力してもらいながらというカタチもありなのではないかとも思いました。
小林さん:貸してくれた企業さんには何らかの税制優遇措置をとるとか行政としてもできることはありそうですね。地域の企業として地域貢献していることにつながることが目に見えてわかれば、参加する企業は増えそうですね。
イベントから学んだこと|文化芸術を守るために
私が文化芸術に興味を持つようになったのは、なはーとの自主公演で開催された、現代版歌舞伎「勧進帳」をみたことがきっかけです。役者一人ひとりの演技、そして細かい舞台演出、そして創造性を育むストーリーに魅了されました。公演終了後は、パートナーと2人で日付が変わるまで考察会議をしました。この豊かな時間を通して、文化芸術は非日常的で創造性を豊かにすることができると実感しました。
この体験を踏まえ、第3回のなはーとダイアローグをふりかえると、文化を享受する側と文化を創造する側のふたつの視点で文化芸術を考えていかなればならないこと、そして誰もが文化芸術の可能性を信じ、作る側も見る側も一緒に文化を育む環境を整えていくことが大事だと改めて考えました。
次回のご案内|第4回 アートは社会の役に立つ?立たなくてもいい?」
【開催概要】
日 時:2024年1月14日(日)14〜17時
登壇者:宮城 潤(若狭公民館 館長)
新垣 隆吾(美術教員 / 写真家)
泉川 のはな(画家)
司 会:狩俣日姫(株式会社さびら)
平岡あみ(那覇文化芸術劇場なはーと企画制作グループ)
会 場:那覇文化芸術劇場なはーと 3階 大スタジオ
参加費:無料
定 員:100名(予定)
申 込:なはーとHPよりグーグルフォームでの申込み
もしくは電話098-861-7810、なはーと窓口にて(10〜19時)
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