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執筆者の写真さびら 株式会社

第1回 なはーとダイアローグ2024-25「なはーとって、なんのためにできたんだっけ?」

みなさん、こんにちは!株式会社さびらの野添です。

弊社が那覇文化芸術劇場なはーとと共に企画制作で携わっている「なはーとダイアローグ」が、今季も開幕いたしました!


なはーとダイアローグとは、那覇文化芸術劇場なはーとを舞台に、地域、表現者・アーティスト、そして市民が交流し学び合う「場」を目指すための対話を行うシンポジウムです。


今回は、去った7月19日(金)に開催した、第1回なはーとダイアローグの様子をお届けします!

 

今回のテーマは、「なはーとって、なんのためにできたんだっけ?」


なはーとは、今年で開館から3年を迎えます。演劇や展覧会、音楽や伝統芸能の公演、ワークショップなど多様な活動も定着してきたところですが、今回はあえて「そもそも、なんのためになはーとって出来たの?」という問いをもとに、建設の経緯から振り返っていきました。


また、なはーとの目的や、すでにできていること、まだできていないことを確認した上で、文化とまちのあるべき関係について考えながら、今後なはーとがすべきことを、市民のみなさまにもご参加いただき、話し合う場になりました。



【開催概要】

日 時:2024年7月19日(金)19〜21時(18時半開場)

登壇者:金城聡(那覇市まちなみ共創部建築指導課長)、         渡久地圭(ビューローダンケ代表)

司 会:石垣綾音(株式会社さびら/まちづくりファシリテーター)、

    平岡あみ(那覇文化芸術劇場なはーとアートコーディネーター)

会 場:那覇文化芸術劇場なはーと 1階 小スタジオ 参加者:42名


 

登壇者による発表①

那覇市まちなみ共創部 建築指導課長 金城聡(きんじょうさとし)さん


イベントは、金城聡さんの基調講演から始まりました。

金城さんは、那覇市まちなみ共創部建築指導課に所属しており、主に都市計画分野に携わって、市民との協働によるまちづくりに取り組んできました。

那覇市役所文化振興課の職員として、なはーとの基本構想・計画に携わった経験から、完成するまでの裏話をお話しいただきました。

基本構想の段階から計画に携わっていた金城さんは、なはーとへの思いもひとしおで、休みを使って県外各地の劇場へ視察へ伺ったり、勉強会に足繁く参加したことも。

これも全て「市民のための劇場」という、なはーとの理念を実現するべく、全力で動いてこられた様子が伝わってきました。


私が特に印象に残ったのは、基本計画策定の時期に「ホールの収容人数を増やして、その分練習スタジオを簡素化するのはどうか」という意見が挙がったというお話👀


確かに収容人数を増やしたほうが、たくさんの人が演劇やライブ等を見に来ることができる。しかし、ホールしかない施設だったら、市民が訪れる回数はおのずと公演がある日だけに限られてきます。一方で、練習室を充実させることで、市民が日常的になはーとを訪れるきっかけを作ることができる可能性もあります。


そう思った金城さんたちは、県内でもトップの客席数を持つ他施設の観客動員数を比較しながら、なはーとでは1600席前後が安定してお客さんを動員することができると判断。また、リハーサル室・練習室を充実させることで、「非日常」な訪れ方だけではない、市民の憩いの場として気軽に訪れることができる土壌も整え、全てが揃う総合的な都市型劇場を作ることができたということでした!


この練習室で汗を流した市民の中から、「もしかしたら未来のアーティストも生まれるかもしれない…!」とワクワクしながらお話を聞いていました🙌


 

登壇者による発表②

一般社団法人ビューローダンケ代表 渡久地圭(とぐち けい)さん


続いて、一般社団法人ビューローダンケ代表の渡久地圭さんのお話しをお聞きしました。

フルート演奏家であり、クラシック音楽プロデューサーの渡久地さんは、主宰団体でワークショップシリーズ等も手がけ幅広く活動しています。


なはーとが出来ると聞いた時、「那覇市民会館がアップデートするんだな」という印象に止まり、「自分たちのような演者との接点が見えづらく、関わるイメージを膨らませることが難しかった」のが、正直なところだったそう。


ところが、開館を間近に控えた頃、なはーとの職員としてのお誘いを受けることになります。なはーと側と何度かやりとりを行う機会がありましたが、「公共劇場の職員になると、ビューローダンケとして、自分のやりたいことが限られてくるかもしれない」と考えた渡久地さんは、お誘いをお断りをしたそうです。


しかし、なはーと側と何度も対話していく中で、職員の思いを受け取った渡久地さんは「街に開かれた劇場になるかもしれない」と感じ、なはーとに対してそこまで期待をしていなかったという当時の音楽業界の関係者を巻き込んで、開館前のPRイベントを那覇市内で手掛けていくことになります。


那覇の商店街の中にピアノを運び込んで路上コンサートを行ったり、那覇市議会を使ってバレエを行ってみたり、伝統芸能アーティストの方々とコラボしてワークショップを開催するなどして、なはーと開館に向けて那覇市民への周知を行っていきました!


今でも、なはーとと共同でイベントを手がけている渡久地さん。

開館前は「公共劇場では、自分のやりたいことはできないだろう」と思ってましたが、今では、対話を重ねながらお互いのやりたいことを形にしています。


渡久地さんが、これからのなはーとに期待することは、「日常的に街の人が居る劇場になってほしい」ということです。

「例えば、カフェがあったり、マルシェがあったり、 劇場の外と内を仕切る見えない壁をなくすような工夫に期待したい」と、なはーとの新たな使われ方について、アイディアをいただきました🙌

 

文化政策にとって、アーティストの存在とは


登壇者2人のなはーととの繋がりを聞いた上で、なはーとで働く林立騎さんから感想を聞きました。


まず金城さんのお話しを聞いて、「建設に携わった方達の想いを受け継いでいくことの難しさ」を、職員として働く身から痛感していると、話してくれました。


「文化振興や文化政策において、アーティストの存在が不可視化されている」ことが問題だと指摘します。


劇場を作る上で、基本計画や基本構想といったものが作られますが、その中には「何をやるか」については事細かに書いていますが、「誰がやるか」は書かれていない。

しかし、劇場で何か企画をしたり、形にするのは演出家や出演者といった「アーティスト」の皆さんですよね。


林さん曰く、「これまで、アーティストと一緒になって何かを想像したり、提供するという考え方が文化芸術・行政にはずっとなかった。そこに根本的な問題があった」と解説します。


行政としても「◯◯をやる」ばかりで「誰がやるのか」が位置付けられていなかったため、渡久地さんがなはーと開館前に感じた「アーティストがどう関わっていくかが見えない」という違和感につながっていたのか、と腑に落ちました👀



 

休憩・交流時間


なはーとダイアローグの休憩時間は、希望する参加者同士で自由に共有する時間も兼ねています。会場に「ダイアローグテーブル」を設置し、参加者同士のみなさんが「どんなことを思っているのか」を題材に、話が弾んでいる様子でした!



 

会場からの質問

質疑応答の時間は、「那覇の文化発信の顔として、1番アピールしたいコンセプトはなんですか?」という質問から始まりました。


それに対し、渡久地さんは「なはーとは、新しいことを始める場」と主張します。

渡久地さんは、アーティストの立場から見て、先ほど林さんが指摘した「話し合いの場での、アーティストの不在」といったものは少しずつ改善されてきていると感じており、関わる様々な人の意見を汲み取りながら企画等を行っている姿を見て、新しい価値観を持った芸術や文化の発信拠点として機能してきていると感じているそうです。


そのあとは、「なはーとって、何でできたんだっけ?」という、本日の主題について会場にいる全員で考えました。

那覇市の「那覇文化芸術劇場なはーと条例」では、以下のように記載されています。

第1条 文化芸術に関する活動を促進し、並びに多様な文化芸術を鑑賞する機会及び創造する環境を提供すること等により、文化芸術の継承及び発展、市民の交流並びに地域の活性化を図り、もって心豊かな市民生活の実現に資するため、那覇文化芸術劇場なはーと(以下「劇場」という。)を設置する。

なはーとは、「文化芸術によって、1人ひとりの心豊かな生活に貢献していくこと」を、究極の目標と定めているのです。例えば、ダンスや絵画、創作活動など「文化芸術」と呼ばれるものを行っている人々は、誰に強制されるわけでもなく、好きという理由だけでやっていますよね。


これがものすごく大事なポイントで、「この表現を誰かに見せたい、知ってほしい、感じてほしい」という自発的で主体的な行為のもと、文化芸術活動は行われています。

そして、表現する人だけではなく、見たら何かすぐに役立つというわけではないけれども、「好きだから」文化芸術活動を楽しみにして観に来る人たちが沢山います。


林さん曰く、「そうした文化芸術活動を通して、自分たちの生活をより彩るものにしていく場になるために、なはーとは出来たのだ」、と話します。


 

第三回目は11月24日(日)。テーマは「未来のアーティストは、どんなまちに住みたいのか?」


そんな「なはーとダイアローグ2023-24」は、まだまだ続きます!

第3回となる11月は、「未来のアーティストは、どんなまちに住みたいのか?」をテーマに開催いたします!



詳細はこちらをご覧ください。


なはーとダイアローグの公式インスタグラムもありますので、こちらもフォローよろしくお願いします!


第2回「あつまれ!みんなの遊び場ー体験を共有する未来の劇場ー」のレポートも、近日公開予定です!

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